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2008年3月11日 (火)

[10-11]-[10-15]

Science For All Americans 勝手に翻訳プロジェクト Chapter 10: HISTORICAL PERSPECTIVES

[10-11]

UNITING THE HEAVENS AND EARTH

But it remained for Isaac Newton, an English scientist, to bring all of those strands together, and go far beyond them, to create the idea of the new universe. In his Mathematical Principles of Natural Philosophy, published near the end of the seventeenth century and destined to become one of the most influential books ever written, Newton presented a seamless mathematical view of the world that brought together knowledge of the motion of objects on earth and of the distant motions of heavenly bodies.

天上と地上との統合[1]

しかし、それら個々の新しい考え方を一つにより合わせ、またそれらを越えて新しい宇宙像(idea)を作り上げる仕事は、イギリスの科学者アイザック・ニュートンへと残された。彼の Mathematical Priciples of Natural Philosophy[2] は17世紀の終わり近くに出版され、これは史上最も影響力のある著作の一つとなるのであるが、彼はこの中で、地球上の物体の運動についての知見と、それとはかけ離れていると見なされていた天上の物体の運動についての知見[3]とを一つにまとめる、一貫した数学的な見方を提示した。

[1] 具体的に言えば、天空の星々の運動の原理と地球上の物体の運動の原理との統合、になるわけで、ここでの earth は地球ではなく地上と訳してみました。
[2] 直訳なら「自然哲学の数学原理」ですが、日本語では「プリンピキア」と呼ばれることの方が多いでしょうか?
[3] distant motions of heavenly bodies なのですが、地球から遠い天上の物体の運動、ということなのか、互いに遠く離れている天空の星々の運動、ということなのか、地球上の運動法則とはかけ離れていると見なされていた天上の物体の運動、ということなのか、判断がついていません。このあたりの段落の主題からして、恐らく三番目ではないかと類推して訳にしてありますが。

[10-12]

The Newtonian world was a surprisingly simple one: Using a few key concepts (mass, momentum, acceleration, and force), three laws of motion (inertia, the dependence of acceleration on force and mass, and action and reaction), and the mathematical law of how the force of gravity between all masses depends on distance, Newton was able to give rigorous explanations for motion on the earth and in the heavens. With a single set of ideas, he was able to account for the observed orbits of planets and moons, the motion of comets, the irregular motion of the moon, the motion of falling objects at the earth's surface, weight, ocean tides, and the earth's slight equatorial bulge. Newton made the earth part of an understandable universe, a universe elegant in its simplicity and majestic in its architecture―a universe that ran automatically by itself according to the action of forces between its parts.

ニュートンの説による世界は、驚くほど単純なものであった。鍵となる少数の概念(質量、運動量、加速度、力)、三つの運動法則(慣性の法則、加速度の力と質量に対する依存性[1]、作用反作用の法則)、そして質量を持ったありとあらゆる物体の間で重力が距離に依存してどれだけ働くかを表す数式としての法則、これらを用いてニュートンは、地球上の運動と天上の運動について厳密な説明を与えることを可能にした。この一セットの考え方(idea)によって、ニュートンは、観測されている惑星と月の軌道、彗星の運動、月の不規則な運動、地球表面で落下する物体の運動、重さについて、海の潮汐、そして地球が赤道付近ではわずかに膨らみを持っていることについて、これら全てを説明することを可能にした[2]。ニュートンは地球の位置付けを理解の及ぶ宇宙の一部にし、また宇宙を、その簡潔さにおいては洗練されその構造においては壮大な、すなわち宇宙はその部分と部分の間に働く力の作用に従って自律的に姿を変えてゆくものとしたのであった[3][4]。

[1] 要するにニュートンの運動方程式のことですが、どうもすっきりとした日本語を作れていません。(3/12 : 訳文を少し修正しました)
[2] 「全てを」は日本語として補うために付け加えました。
[3] ran automatically by itself をうまく日本語にできず、かなり苦し紛れの訳文になっています。「自動的になるようになっていく」とかいうような言い方のほうがいいでしょうか?(3/12 : 訳文を少し修正しました)
[4] majectic in its architecture でなにを言わんとしているのかよくわかっていません。majestic ですから肯定的な意味のはずですが、壮麗というにしろ、壮大というにしろ、単にすばらしいというにしろ、宇宙が自動的なものだという話とどう繋がるのか理解できていないのです。そんなわけでここは保留してあります。(3/12 : 訳文を修正しました)

[10-13]

Newton's system prevailed as a scientific and philosophical view of the world for 200 years. Its early acceptance was dramatically ensured by the verification of Edmund Halley's prediction, made many years earlier, that a certain comet would reappear on a particular date calculated from Newton's principles. Belief in Newton's system was continually reinforced by its usefulness in science and in practical endeavors, right up to (and including) the exploration of space in the twentieth century. Albert Einstein's theories of relativity―revolutionary in their own right―did not overthrow the world of Newton, but modified some of its most fundamental concepts.

ニュートンのシステム[1]は、世界の科学的かつ哲学的な見方として200年に渡って広く普及した。ニュートンのシステムは早くから受け入れられていったが、この受容は、エドモンド・ハレーの予想が実証されたことによってめざましく確実なものとなった。ハレーは、ある特定の彗星が、ニュートンの原理によって計算されたある特定の日に再び現れることを何年も前に予想したのである。ニュートンのシステムに対する確信は、科学において、また実用上の努力において、それはまさに20世紀の宇宙探査に至るまで(宇宙探査に至っても[2])、その有用性によって一貫して強められていった。アルベルト・アインシュタインの相対性理論も――これもその正しさにおいて革命的だが――ニュートンの世界観を投げ捨てたのではなく、最も基礎的な概念のいくつかを修正したものである。

[1] system は日本語でも「システム」でもいいとは思うのですが、「ニュートンのシステム」という表現は日本語としてピンと来る表現でしょうか? 「ニュートンによる世界観」のように言った方がいいだろうか、と悩みました。
[2] 括弧内の including は、その直前の「~まで」が終わりを示しているのではないのだと言いたいための語だと判断しました。

[10-14]

The science of Newton was so successful that its influence spread far beyond physics and astronomy. Physical principles and Newton's mathematical way of deriving consequences from them together became the model for all other sciences. The belief grew that eventually all of nature could be explained in terms of physics and mathematics and that nature therefore could run by itself, without the help or attention of gods―although Newton himself saw his physics as demonstrating the hand of God acting on the universe. Social thinkers considered whether governments could be designed like a Newtonian solar system, with a balance of forces and actions that would ensure regular operation and long-term stability.

ニュートンによって行なわれた科学研究[1]は大成功を収め、その影響は物理学と天文学を遥かに越えて広がっていった。物理学上の諸原理と、それらを組み合わせてさらなる結論を導き出すニュートンの数学的手法は、他の全ての科学のための手本となった。自然界のありとあらゆるものはやがては物理学と数学の形で説明できるようになるだろうと、そしてそれゆえに自然は神の助けや配慮を必要とせずに、それ自体によって成り立っていくことができるものだ[2]、という確信が育っていった。もっともニュートン自身は彼の物理学については、この宇宙で、この世界で[3]、神の手が働いていることを示すものだとみなしていたのだが。社会思想家[4]は、ニュートンの考え方による太陽系のような形に政府を設計できないだろうかと、つまり通常の業務と長期的な安定性を保証するように力と作用のバランスを保つような形に政府を設計できないだろうかと検討を重ねた。

(3/22 : The belief grew that ... の箇所、訳文を修正しました)

[1] science : 意味を明示的にするために「科学研究」としました。
[2] [10-12]でも出てきましたが、自然が run するという表現は日本語では何と言ったらいいものか、悩みながらの訳文になっています。
[3] ここでの universe は、神に関する話ですし、「宇宙」よりも「この世界」と言った方が適当でしょうか。
[4] social thinker は日本語で一言であてはまる言葉はあるでしょうか。「社会学者」だと言い過ぎのような気がするのですが。(3/22 : 「社会思想家」でぴったりでしょうか?)

[10-15]

Philosophers in and outside of science were troubled by the implication that if everything from stars to atoms runs according to precise mechanical laws, the human notion of free will might be only an illusion. Could all human history, from thoughts to social upheavals, be only the playing out of a completely determined sequence of events? Social thinkers raised questions about free will and the organization of social systems that were widely debated in the eighteenth and nineteenth centuries. In the twentieth century, the appearance of basic unpredictability in the behavior of atoms relieved some of those concerns―but also raised new philosophical questions.

科学の内においても外においても、哲学者達は、もし全てが、星々から原子に至るまでが、機械的に成り立つ正確な法則に従って動いているのであれば、人間の自由意志というものは幻想でしかないかもしれないということになるのではないか、という推論に悩まされた。人類の歴史全ては、個人の思索から社会の激変に至るまで、完全に決定されている一連の事態が次々と続いていっているだけなのだろうか? 社会思想家(social thinker)は、自由意志と社会システムの組織[1]についての問題を提起し、これらは18世紀と19世紀において広く議論された。20世紀に入ると原子の振舞いについての根本的な予知不可能性が姿を現し、これらの懸念をいくらか取り払った――もっともまた新たな哲学的問題が持ち上がりはしたが。

[1] organization of social system なのですが、ここでは機械的なものなのかどうかという話のはずなので、社会機構がどのように変動していくか、というような意味になると思うのですが、これまた適当な日本語にまとめることができていません。

今日はここまで。

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コメント

[10-12]についてです。
> the dependence of acceleration on force and mass
これは『加速度 の 力と質量に対する依存 性 』でどうでしょうか。

> automatically by itself
言葉がダブっていますが訳は『自律的に』くらいでいいのではないでしょうか。
ranを『姿を変えてゆく』としたのは良いと思います。

> majectic in its architecture
これは、その前の"elegant in its simplicity"との対比で、
「法則は単純だが出来上がった宇宙は壮大で多様だ」という話でしょう。

投稿: hoyt | 2008年3月11日 (火) 23時57分

> hoyt さん

コメントありがとうございます。
いい感じに思えたので言葉はそのまま置き換えてみました。三番目の majestic の前後は、文の構造を完全に勘違いしてしまっていたようで、読み直して訳文を作り直してみました。これならすっきりと意味の通った文章になったんじゃないかと思います。

投稿: Yamanaka | 2008年3月12日 (水) 23時44分

[10-12]
"equatorial bulge"は赤道付近の膨らみというよりは、地球が楕円形であることではないでしょうか。

[10-14]
"The belief grew that ..."は『ニュートンのシステムに対する確信』ではなく、『that以下の内容に対する確信が育っていった』ではないでしょうか。

"social thinker"は[10-5]と同じで社会思想家でどうでしょうか。

投稿: hoyt | 2008年3月22日 (土) 09時31分

> hoyt さん

[10-12] equatorial bulge
ええ、要は地球が球ではなくて回転楕円体だということなのですが、原文では equatorial とあるので自転軸に対して縦長ではなく横に膨らんだ形であるという意味まで含んでいるので、そういう形を表現しようとしての日本語のつもりでした。あまりいい日本語になっていませんかね?

[10-14] The belief grew that ...
ああ、仰る通りですね。The belief を見て反射的に前段落に出てきた「ニュートンのシステムに対する確信」を受けているのかと思ってしまって訳文をひねり出していましたが、これは「(that以下...)の確信が育っていった」ですね。ありがとうございます。

投稿: Yamanaka | 2008年3月22日 (土) 13時38分

"equatorial bulge"ですが、『赤道付近』というと本当に赤道の近くだけが膨らんでいるような印象を少しですが受けました。『赤道方向にわずかに膨らみを持っていること』ではどうでしょうか。

"social thinker"については、単に検索エンジンなどで調べたらそう出てきたという程度なのでお気になさらず。

投稿: hoyt | 2008年3月22日 (土) 17時19分

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